主催:NPO法人 輸入品販売交流協会 理事長 六川渉右が、池袋サンシャインワールドマートビルで開催されたセミナー「フェアートレードを考える」について語る。
フェアトレードは「公平貿易」「公正貿易」とも呼ばれます。1960年代に、経済的、社会的に立場の弱い途上国の生産者に対して、彼らの生産活動や生活が成り立つ適正な価格で継続的にコーヒーやバナナなどの農産物や手工芸品などを取引し、発展途上国の自立を促すという人道的側面が強い社会運動、国際協力活動としてヨーロッパで始まりました。
現在ではフェアトレードを通した民主的な生産者組合の運営や、生産管理やビジネススキルの向上、また有機栽培などの環境に優しい農業の奨励により、経済的、社会的、環境的問題のバランスをとる持続可能な発展のための社会的措置であると認識されています。
このようなフェアトレードは40年以上も前から存在していました。それは北側のNGOと、発展途上国の小規模生産者との間のパートナーシップとして始まりました。
長年にわたって、いくつものフェアトレード団体が各国で創られました。これらのフェアトレード団体がネットワークを作り上げ、単に発展途上国で不利な立場にある生産者の製品を売るというだけでなく、小規模生産者が生き残って行くことが極めて困難な現在の貿易システムの現状について、人々に知らせることになりました。そのフェアトレード団体の活動は今でも「フェアトレードを広く周知させる」という面では非常に重要な役割を果たしていましたが、残念ながら必ずしもフェアトレード製品が一般の市場であるスーパーマーケットの消費者に行き渡っているとは言えませんでした。
そこで1989年前にフェアトレード認証ラベル(以下フェアトレードラベル)がオランダで生まれました。フェアトレードラベルの本来の目的は、フェアトレード製品がラベルによって保障され、フェアトレードショップだけでなく、スーパーマーケットなどでも売られることによりフェアトレード市場を拡大させることにあります。
この最初の行動に続いてその他の国でもフェアトレードラベル運動がおこり、1997年に17カ国のフェアトレード組織がFLO(Fairtrade Labeling Organizations International)として1つの傘となる組織の下にあつまりました。
NPO法人輸入品販売交流協会が認証するフェアトレードブリッジラベル
対象となる生産者 | フェアトレードの対象者は小規模農家や農園労働者である。 |
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最低価格 | 最低価格は、単に生産コストをまかなうだけでなく、「将来に対する投資」のための分を含まなければならない。 |
前払い | 生産者が債務の罠に陥らないように、販売に際して前払いの機会が与えられなければならない。 |
長期安定契約 | 収入の安定をはかるために、また将来の投資の基礎として長期の契約を結ぶことをめざす。 |
FLOのフェアトレードのネットワークには2004年2月現在、アフリカ、アジア、ラテンアメリカの48カ国から357の認定生産者団体、80万世帯の農民と労働者が加盟しています。フェアトレード運動によってアフリカ、アジアそしてラテンアメリカの多くの生産者と労働者が国際マーケットに参入し、適正な収入を得て、それにより将来のために投資することが可能になります。その利益によって生産者は安定した生活を営み、またフェアトレードによって得られた利益の一部は生産組合に蓄えられ、井戸や学校の建設、融資また救急車の共同購入など社会発展の事業に使われます。そして民主的な組合運営やフェアトレードを通した経済活動、社会発展のための事業を通して組合員がエンパワーメント(能力向上)の機会を持ちます。昨年彼らは少なくても4億ドル以上の利益をフェアトレードで得ました。何百万という消費者がフェアトレード製品を買うことによって生み出される機会が、グローバリゼーションの中で危機的状況におかれている人々をどれだけ助けているか理解することができるでしょう。
前項で見たように欧米ではフェアトレードラベル製品が一般のマーケットに広く普及しています。スイスではフェアトレードバナナのシェアが25%にも達しています。また外務省や開発省、環境省などの政府機関がフェアトレードキャンペーンへの支援をおこなったり、政府からフェアトレードラベル推進団体への補助金なども多くあります。フォルクスワーゲンやマイクロソフトなど多くの企業がCSR(企業の社会責任)として社内で消費されるコーヒーをフェアトレードコーヒーに替えています。 またUCLAなどの多くの学校や病院、地方自治体がフェアトレードコーヒーを採用しています。
日本ではまだまだフェアトレードラベル製品の普及は低いのですが、日本はそのマーケットの大きさから、大きなポテンシャルを持っています。もしマーケットのシェアを1%得ることができたならば非常に多くの生産者を支援することが出来るでしょう。また昨今は消費者のフェアトレードへのニーズも増加し、それを受けて2002年からはスターバックスが、また2003年からはジャスコ(イオン)がフェアトレードコーヒーの販売を開始しました。またCSR(企業の社会責任)の普及に伴い、更に多くの企業がフェアトレードへの取り組みを開始することが予想されます。