冬の巻コート

 

 コートという言葉が日本に伝えられたのは、明治になってからですが、コートの起こりは、もともと男性が

旅をするのに、風雨よけに着用した坊主合羽とか半合羽がその後、明治の中頃改良されたとか、羽織から変化

して吾妻(あずま)コートや被布(ひふ)などになったともいわれています。いずれにせよ、コートは防寒、

ちりよけ、雨よけ、おしゃれ用、仕事用などあり、それらのなかにも晴れ着用、街着用、祝儀、不祝儀などあ

り、季節によっても、袷(あわせ)コート、単(ひとえ)、紗(しゃ)などの透けるものなど、季節、用途、

目的などにあったものを揃えておくとよいでしょう。また、今日では道行(みちゆき)衿のコートのことを単

に道行と呼んで、デザインがすっきりしていて、年齢にも関係なくあきがこないためか、一般的に好まれてい

るようで、この形のもので素材、文様などを考えて広く着用されています。



防寒コート
 寒さよけですから、暖かい素材のものが好まれます。実用的おしゃれ向きには、ツィード、フラノ、ジャー

ジーなどのウール製品や交織物など、また礼正装用として、カシミヤ、ベルベットなど絹製品のものなどが適し

ています。

 防寒コートをやや長い目に仕立てておくと、下に着ているもの(羽織など)も見えず防寒にもつながります。

私は先年冬ヨーロッパへ旅する際、毛皮の和装コートを手に入れましたが、防寒には完璧なものでした。

雨コート
 雨コート用に織られたものや、サテン、繻子などを防水加工したものやナイロン製のものなど。雨の日は陰気

になりやすいため、明るく派手めな色目のもの、柄も水玉や縞柄、格子柄、幾何文様などはっきりしたものが好

ましい。足のくるぶしの長さに仕立てます。また二部式コートといって上衣と、巻きスカート式になっている

下衣とからなり、途中で雨があがったりすると下をはずして、上衣のコート丈で着用できる便利なものもありま

す。

礼装用コート
 結婚式やパーティーなどの礼装用コート。緞子縮緬、紋意匠縮緬など地紋の美しい無地染。金通しや縫い取り

もの、黒留袖の裾模様と調和の良い絵羽文様の染めもの。

準礼装(訪問着、付け下げ)
 礼装用以外に絵羽文様のものや総絞り、文様絞りした華やかな高級感のあるもの。

 また、ぼかし染も一枚あると重宝なものです。

街着のコート(小紋その他おしゃれ着)
 格子とか縞柄、麻の葉など簡単なしゃれっぽい地紋の無地染や小紋柄。紬、御召、洋服地なども気軽でいいも

のです。街着コートの場合小紋柄同士の組み合わせの場合、きものとコートの柄の大きさや色の濃淡を変えたり

縞柄同士とか、格子同士の組み合わせは避けたほうがいいでしょう。小紋のうえなどには本当の趣味のものとし

て、かなり幅広くいろんなデザインや柄を楽しむことができます。衿の形も自由です。

透けるコート
 袷コート以外に単コートがあります。絽、紗、羅、レース(透けるもの)、紬類、ウール、絣などあります。

ちりよけ、おしゃれ用で四月〜五月、九月〜十月くらいの季節の変わり目に着用します。透ける物で他に二重紗

があり、単と袷の間のほんの短期間着用しますが、微妙な気候の変化に合わせて情緒ある風情を楽しめます。


 このようにコートも目的などにより雨コート、礼装用、街着用、単物くらいは揃

えておきたいもの。街着のおしゃれ用などは数枚をきものに合わせて着ると、雰囲

気が変わりおしゃれが楽しめます。きものの格にあったもので、色、柄など考慮し

て着るとよいでしょう。


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